2012年は、直木賞作家の故・檀一雄(1912年(明治45年)~1976年(昭和51年)の生誕100年。
『火宅の人』などの名作の数々を著し、近代文学史に大きな足跡を遺した檀一雄は、山梨県に生まれ、福岡県久留米市や栃木県足利市などで幼少期を過ごしました。昭和17年、結婚して上京、練馬区(当時は板橋区)の石神井に住みますが、同時に陸軍報道班員として中国大陸各地を歩きました。幼い子供を遺して逝った妻・律子との福岡県での最後の生活は、『リツ子・その愛』『リツ子・その死』の作品に昇華し、再婚後は再び上京して昭和26年に『長恨歌』『真説 石川五右衛門』で第24回直木賞を受賞、流行作家となります。
「天然の旅情」に身を任せて旅に日々を送ることも多く、中国大陸をはじめ、捕鯨船で南氷洋に赴いたり、ポルトガルに滞在するなど旅と檀一雄は一体のものでした。
「最後の無頼派」と称せられることが多い作家ですが、その小説と、遺された多くの短歌、俳句、詩作品からは、無頼というよりも鮮烈な抒情性が溢れていることに気付かされます。
檀自身の人格の魅力に、佐藤春夫、太宰治、井伏鱒二、坂口安吾、中原中也、草野心平、棟方志功をはじめ多くの芸術家の交友の核となったことも特筆すべきことでしょう。
死の直前まで口述筆記した「火宅の人」は没後、読売文学賞、日本文学大賞を受賞し、命をかけて文学と格闘した作家でした。
料理にも情熱を傾け「檀流クッキング」は楽しい著書としても著名です。
本展は、練馬ゆかりの作家・檀一雄の生誕100年を記念して資料を展示し、その足跡をたどり、人間本来の生命力とみずみずしさ、そして深い人間洞察にあふれた氏の文学をご紹介しました。
生原稿などの文学資料のほか、初公開の自画像や妹の像、風景画(油絵)を含め、詩・書・画それぞれの詩情に溢れた作品から、一時代を駆け抜けた檀一雄の世界をご紹介しました。
1. 会期 平成24年11月29日(木)~12月24日(月)
2. 会場 練馬区立石神井公園ふるさと文化館 2階企画展示室およびギャラリー
3. 主催 練馬区・(財)練馬区文化振興協会
4. 展示内容 檀太郎氏から練馬区に寄贈された遺品および他館等から借用した資料。
5. 会期中のイベント 講演会、「檀流クッキング」講座など。
6. 事務局 (財)練馬区文化振興協会 文化推進係
〒176-0001 練馬区練馬1-17-37 電話03-3993-3311 Fax03-3991-9666
会期中のイベント
1.講演会「檀一雄と『火宅の人』」●講師:小島千加子氏(元新潮社編集者)
檀一雄の最後の口述筆記(「火宅の人」の最終章)を行った方。
●日時:2012年12月2日(日)14:00~
2.檀流クッキング講座●講師:檀太郎氏
「ビーツサラダ」と「プルピートス」を作りました。
●日時:2012年12月8日
3.ゲストトーク●ゲスト:近藤洋太氏(日本大学藝術学部講師、「歴程」同人)
●テーマ:檀一雄の詩心
●日時:2012年12月15日
4.昭和10年代の石神井公園写真募集「思いを言葉にしよう!」コーナー
5.展示解説毎週日曜日+最後の連休は毎日実施