日本画家、松林桂月(まつばやしけいげつ/1876~1963)は明治・大正・昭和の3つの時代を生き、数々の名作を残した近代を代表する日本画家です。山口・萩に生まれた桂月は、幼い頃から絵を好み、東京に出て文人画家・渡辺崋山の孫弟子にあたる野口幽谷に師事し、精緻で格調高い表現を学びました。また、親しんでいた漢詩の教養を活かして、詩・書・画の三絶の境地を目指す文人画―南画を描いたことも特筆されます。桂月は、南画の真髄ともいうべき水墨画においては他の画家の追随を許さず、その独特の叙情的な作風は高く評価され、1958年には文化勲章を受章しています。
本年は、桂月が世を去ってから50年という節目の年に当たります。この半世紀の間に開催された大規模な展覧会は、桂月の没後間もなく門人たちによって開催された遺作展と、1983年に山口県立美術館で開催された「松林桂月―その墨と色彩の妙―」展のみで、近年にはその芸術を通覧できる機会はほとんどありませんでした。そのため、桂月の名も、画も、一部の美術愛好家だけが知るところとなりつつあることが惜しまれます。
本展は、30年ぶりとなる回顧展として、初公開を含む大作、名品で、詩書画の全てに優れた才能を示し、近代にあって水墨画の表現を極めた、桂月の豊かな芸術世界を紹介するものです。
<開催案内>会 期 2014年4月13日(日曜)~6月8日(日曜)
主 催 練馬区立美術館/日本経済新聞社
助 成 公益財団法人 花王 芸術・科学財団
協 力 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2014
休館日 月曜日
*但し、5月5日(月曜)・6日(火曜)は開館、
5月7日(水曜)休館
開館時間 午前10時~午後6時(入館は5時30分まで)
観覧料 一般500円、大学・高校生および65~74歳300円、
中学生以下および75歳以上無料、
障害者手帳をお持ちの方(一般)250円・(高大生)150円、
団体(20名以上)一般300円・高大生200円
※無料、割引の方は確認できるものをご提示ください。
<会期中のイベント>ギャラリートーク
「ゲストによるスペシャルトーク、松林桂月へのまなざし」 ナビゲーター:野地耕一郎(泉屋博古館学芸課長)
(1) 2014年5月25日(日)午後3時から 浅見貴子(画家)
(2) 2014年5月31日(土)午後3時から 加藤良造(画家)
記念講演会「最後の南画家―松林桂月の人と芸術」
講師 村田隆志(大阪国際大学専任講師)
日時 2014年5月10日(土)午後3時から
貫井図書館共同開催:銀河万丈(声優)による読み語り 日時 2014年5月24日(土)午後3時から
演題 浅田次郎作「江戸残念考」他
記念コンサート
「薩摩琵琶と箏による演奏会」 演奏 荒井靖水(薩摩琵琶)、荒井美帆(箏)
日時 2014年4月19日(土曜)午後3時から
会場 美術館ロビー
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン協力コンサート」 演奏 土谷茉莉子(第1ヴァイオリン)
加藤美菜子(第2ヴァイオリン)
小倉萌子(ヴィオラ)
山田健史(チェロ)
日時 2014年4月26日(土曜)午後3時から
会場 美術館ロビー
松林桂月略歴1876年(明治9)、山口県萩の生まれ。本名は伊藤篤。1893年(明治26)、上京し野口幽谷に入門、南画を学ぶ。1896年(明治29)、日本美術協会展に<菊花闘鶏図>を初出品、2等賞となる。1898年(明治31)に幽谷が没してからはほぼ独学で絵の道を進む。一時病気のために帰郷するが、療養後ふたたび上京。1902年(明治35)に環翠会画塾(のちの天香画塾)を開設。1906年(明治39)には山岡米華らと日本南宗画会を設立した。1908年(明治41)、第2回文展に<遊鴨>を出品し、初入選。以降、文展、帝展、日展などに出品を続ける。1939年(昭和14)、ニューヨーク万博に代表作となる<春宵花影>を出品する。1932年(昭和7)帝国美術院会員に、1937年(昭和12)に帝国芸術院会員、1944年(昭和19)には帝室技芸員となる。1960年(昭和35)、日本南画院の設立にあたり会長に就任。南画の表現に新たな世界を開拓し、南画界の重鎮として地位を確立した。1958年(昭和33)、文化勲章を受章。