牧野邦夫(1925~86年)は、大正末に東京に生まれ、1948年に東京美術学校油画科を卒業しますが、戦後の激動期に次々に起こった美術界の新たな潮流に流されることなく、まして団体に属して名利を求めることなどからは遠く身を置いて、ひたすら自己の信ずる絵画世界を追求し続けた画家です。
高度な油彩の技術で、胸中に沸き起こる先鋭で濃密なイメージを描き続けた牧野の生涯は、描くという行為の根底に時代を超えて横たわる写実の問題と格闘する日々でした。レンブラントへの憧れを生涯持ち続けた牧野の視野には、一方で伊藤若冲や葛飾北斎、河鍋暁斎といった画人たちの系譜に連なるような、描くことへの強い執着が感じられます。また、北方ルネサンス的なリアリズムと日本の土俗性との葛藤という点では、岸田劉生の後継とも見られるでしょう。
生前に数年間隔で個展を開くだけだった牧野の知名度は決して高いものではありませんでしたが、それは牧野が名声を求めることよりも、自分が納得できる作品を遺すことに全力を傾注した結果でしょう。
本展は、1986年61歳で逝去した牧野の30余年にわたる画業から生み出された珠玉の作品約120点を紹介するものです。
<開催案内>会 期 2015年4月14日(日曜)~6月2日(日曜)
休館日 月曜日(ただし4月29日(月曜・祝)、
5月6日(月曜・祝)は開館、翌日休館)
開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
観覧料 一般500円、高・大学生および65~74歳300円、
中学生以下および75歳以上無料(その他各種割引制度あり)
主 催 練馬区立美術館/日本経済新聞社/テレビ東京
協 賛 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2013
牧野邦夫(まきの・くにお/1925-1986)略歴1925年、現在の渋谷区幡ヶ谷の生まれ。幼少期を小田原で過ごす。幻想小説家の牧野信一は従兄にあたる。父母を早く亡くし、ゴッホやレンブラントに魅かれて画家を志す。東京美術学校油画科に学ぶが、1945年学徒出陣し九州宮崎で終戦。戦後の1948年、東京美術学校を卒業。写実的な人物画で知られるようになり、1962年と65年の安井賞候補新人展に入選。1966年、オランダを中心に滞欧。美術団体に属さず、数年毎の個展にのみ細密写実による作品を発表し続けた。
<会期中のイベント>ギャラリー・トーク
「ゲストによるスペシャルトーク、牧野邦夫へのまなざし」 4月20日(土曜)五味文彦(画家)
5月4日(土曜)諏訪敦(画家)
5月18日(土曜)石黒賢一郎(画家)
6月1日(土曜)山下裕二(明治学院大学教授)
ナビゲーター:野地耕一郎(当館主任学芸員)
各日午後3時から展示室内で行います。
記念コンサート>
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2013×練馬区立美術館」スペシャルコンサート 演奏 長谷見 誠(フルート)、神永睦子(ピアノ)
日時 4月27日(土曜) 午後3時~午後4時
プログラム フォーレ:シシリエンヌ
ロドリーゴ:ある貴神のための幻想曲
マレ:スペインのフォリアによる変奏曲
ドビュッシー:「子供の領分」より
ビゼー:カルメンファンタジー
ハッピーバースデイ・コンサート、牧野邦夫が愛したギター曲5月27日生まれの牧野を祝います。
演奏 三澤勝弘(フラメンコギター)
日時 5月25日(土曜)午後3時~4時
貫井図書館共同開催:銀河万丈(声優)による読み語り 演題 江戸川乱歩「人間椅子」ほか
日時 5月11日(土曜)午後3時から