■開催趣旨■
1985年に開館した練馬区立美術館は当初より美術作品の収集に取り組み、作品数は現在約5,500点、寄託作品を含めれば約7,500点に上っています。この中でも絵画作品は、日本の戦後美術の流れを語るのに欠かせない作品を含む、重要なパートとなっています。
そこで今回のコレクション展では、そうした所蔵品の中から、戦後まもなく描かれた作品から近年に制作されたものまで、約35名の作家による油彩画を中心とした約70点の作品を展示し、表現の流れを振り返ります。
こうしたコレクションは、各時代の世相や思想を様々なかたちで映すものです。またそれは、開館して37年を迎える当館の歴史そのものでもあります。様々な経緯で収蔵(購入・寄贈・寄託)されてきた作品たちは、収蔵庫から展示室に移り観客の視線を受けることによって、新たにその表情を輝かせるでしょう。見られることによって何度でも繰り返す、けれどもその場だけの唯一の時間、そうした出会いを演出したいと思います。
会期 2022年4月10日(日)~6月12日(日)
休館日 月曜日
開館時間 10:00~18:00 ※入館は17:30まで
観覧料 一般800円、高校・大学生および65~74歳600円、
中学生以下および75歳以上無料
障害者(一般)400円、障害者(高校・大学生)300円、
団体(一般)600円、団体(高校・大学生)500円
ぐるっとパスご利用の方300円(年齢などによる割引の適用外になります)
練馬区文化振興協会友の会会員ご招待(同伴者1名まで)
※観覧当日、受付で会員証をご提示のうえ、招待券をお受取ください。
※一般以外のチケットをお買い求めの際は、証明できるものをご提示ください。
(健康保険証・運転免許証・障害者手帳など)
※障害がある方の付き添いでお越しの場合、
1名様までは障害者料金でご観覧いただけます。
※団体料金は、20名様以上の観覧で適用となります。
主催 練馬区立美術館(公益財団法人練馬区文化振興協会)
■出品予定作家(50音順)■
浅見貴子/荒川修作/池田龍雄/石原友明/上田薫/大小島真木/大沢昌助/岡本唐貴/小野木学/オノサト・トシノブ/北川民次/北代省三/工藤哲巳/久野和洋/小山穂太郎/近藤竜男/佐藤敬/嶋田しづ/白髪一雄/諏訪直樹/高橋秀/高松次郎/高山良策/辰野登恵子/谷川晃一/鶴岡政男/中西夏之/中林忠良/中村宏/難波田龍起/野見山暁治/藤松博/村井正誠/山口薫/山口長男/山田正亮
■主な出品作家と作品紹介■(制作年順)
・北川民次(きたがわたみじ 1894~1989)は静岡県の生まれ。1914年に渡米、ニューヨークで絵画を学ぶ。21年にはメキシコに移り、本格的な活動を始める。36年に帰国。第二次大戦中に瀬戸に移り制作を続け、戦後も家族や働く人々、社会的なモチーフを好んで取り上げる。また美術教育にも尽力する。《姉弟》は戦後早い時期の作品。画家の子どもたちが描かれており、力強い画面に家族への温かい視線が表れている。
・高山良策(たかやまりょうさく 1917~82)は山梨県の生まれ。1931年に上京して絵を独学。中国での応召後45年に池袋モンパルナスに移り、戦後は美術文化協会展などを中心に現代文明や人間の内面を追求するような絵画を展開。55年には練馬区石神井に移り、没するまで制作の拠点とする。66年以降はウルトラシリーズなどの怪獣製作でも知られる。《遥かなるものへ川は流れる》では半ば抽象的な幻想風景が描かれている。
・オノサト・トシノブ(1912~86)は長野県の生まれ。本名小野里利信。日本における抽象絵画の先駆者。1931年「黒色洋画展」の結成に参加。41年からの応召とシベリア抑留を挟み、帰国後55年以降は円や縦横の線を基調とした抽象作品を展開。《Untitled 1960》はベタな円と水平垂直の線の網目による、当時の典型的な作風を示す。64年に第34回ヴェネツィア・ビエンナーレに出品するなど、国際的な評価も高い。
・高松次郎(たかまつじろう 1936~98)は東京の生まれ。1963年、赤瀬川原平、中西夏之と「ハイレッド・センター」を結成。街頭ハプニングなどの活動を展開。64年頃から画面に人間の影だけを描き実在物と虚像のありかたを問いかける「影」シリーズを開始。本作《影》もその典型的な一点で、亡くなるまで繰り返し制作された思い入れのあるシリーズだった。サンパウロ・ビエンナーレ、ドクメンタ6への出品など、国内外において発表を続けた。
・村井正誠(むらいまさなり 1905~1999)は岐阜県の生まれ。新設の文化学院大学部美術科を卒業後、渡仏。マチスやモンドリアンほか様々な美術に接し、帰国後はいち早く抽象絵画を試みる。戦後は「モダンアート協会」を設立、有機的な形態と明快な色彩による、独自の絵画を展開した。またサンパウロ・ビエンナーレ展など多くの国際展に出品。《いそぐ人》は、人体的な形態による構成で、シンプルな中に生き生きとした動きが感じられる。
・谷川晃一(たにかわこういち 1938~)は東京の生まれ。1963年「読売アンデパンダン」に出品し画家として活動を始める。64年には「内科画廊」で個展、「無意識」「即興」「原初性」がデッサンの要素となる。70年代後半には物語的要素を取り入れる。88年には伊豆高原に転居し、雑木林の中で得たアニミズムの感覚が溢れる画風へと変化する。《春の月》もこの時代に制作されたもので、命を吹き込まれたようなモチーフたちが、リズムをもって配置される。
・辰野登恵子(たつのとえこ 1950~2014)は長野県の生まれ。東京藝術大学在学時よりシルクスクリーンを使って既存のイメージを取り込む手法を始め、次にはドット(水玉)やグリッド(格子)に着目した表現、70年代後半からは油彩画によるストライプ、また曲線的なイメージの探索が行われ、80年代後半からは「爆発的に単純で大胆なかたち」(辰野)による絵画表現が繰り広げられる。《Untitled 92-7》も、この頃の代表的な作品である。
・浅見貴子(あざみたかこ 1964~)は埼玉県の生まれ。多摩美術大学日本画専攻を卒業。2008年文化庁新進芸術家海外研修員としてニューヨークに滞在。国内外で多く招聘、滞在制作を行う。樹木をモチーフとし、和紙の裏側から墨で描くという制作方法を続けており、《Matsu 2》もその一点である。「樹木の造形や陽の光、風という豊かな自然を描き写し、墨と和紙に筆という優れた画材に委ねることで、自分を越えた表現に立ち会う」(浅見)